夫が失踪……気持ちを変えたのは家族の声でした

夫婦のお悩み解決コラム

誰からも「優しい人」と言われながらも少し頑固なところがあった夫と、何でもきっちり管理したがる小うるさい妻…夫がいなくなるまでは「よくある夫婦のカタチ」と思っていました。

 

日本の「行方不明者届」の数は年間8万件を超えるそうです。でもまさか自分の家族が、自分の夫が、そのうちの1人になるとは……

 

どういう想いで失踪してしまったのか……夫を“日常”に戻したのは、家族の声でした。

夫が失踪……気持ちを変えたのは家族の声でした

夫が行方不明になった日

夫の誕生日、人生が大きく変わりました。あの日、サラリーマンの夫はいつも通り「行ってきます」と言って出かけました。パート勤めの私も家事を済ませ出勤。

 

駅へ急ぐ私の携帯に、夫の会社から「彼がまだ会社に来ていない。連絡もつかなくて困っている」と電話がかかってきました。夫に電話をかけるもコール音は鳴りますが一向に出ません。まじめな夫ですが、まさかどこかでサボっているのか……

最初に感じたのは苛立ちでした。「何やってるの!?」時間が経つにつれ苛立ちは怒りに変わり、責め口調で何度もメールを送るものの反応なし。

 

そのうち夫の母からも「息子が会社に行っていないようだ」という電話が入り、少しずつ不安になり始めます。午後2時を回っても全く連絡が取れない状況に「何かが起きている」とは考えるものの、なぜか他人事のように感じていました。

なぜ夫はいなくなったのか

翌日になっても夫とは連絡が取れませんでした。「夫が行方不明になりまして……今日は帰らせてください」とパート先の上司に早退を申し出ました。「夫が行方不明に…」こんなセリフをまさか使うときが来るとは……

 

自宅に帰ったところでどうすることもできず、唯一できたのは警察に電話すること。近くの駐在所から警察官が来てくれましたが、捜索願は警察署まで行く必要があるとのことでした。

 

「もしかしたら帰ってくるかも」と考えて警察署には翌日出向くことにしましたが、“予定通り”翌日は夫の両親と共に警察署で捜索願を提出。

 

思い当たる原因があるかと聞かれ、まず答えたのは職場のパワハラ。夫とは同じ職場で出会ったため、実際にパワハラのようなことが起きているのを知っていました。でも本当は「原因は当然自分以外のどこかにある」と思いたかったのかもしれません。

言葉にならない恐怖と戦う毎日

一人でいると、不安と恐怖で胸が張り裂けそうでした。

 

「このまま帰ってこなかったら、一人で生きていく方法を考えなくては」「パートを辞めて正社員の就職先を探そう」。夫の携帯に何度も電話をかけ、メールも送りながらも、そのときはただひたすら自分のことしか考えられませんでした。正直、自分をつらい目に合わせる夫に怒り、心の中でなじってもいました。

 

眠れない、食べられない。上司からは止められたものの普通に会社に行ったり、前々から約束していた友人との会食、読書をして今の境遇を忘れることで、どうにか気持ちを落ち着かせる日々……

 

居ても立ってもいられず、夫のフェイスブックを覗いて夫の幼馴染みたちに呼びかけました。「夫が行方不明です。幼いころを過ごした地域に行っているかもしれないので、探してください」。

 

海が好きな夫を探しに、私も自分が行ける範囲の海沿いの場所へ。夫の写真を持ち歩き「この人見かけませんでしたか?」と聞いて歩きました。

「死ぬまでにもう一度夫に会わせてほしい」

朝から晩まで探しまわっている間は良かったです。しかし、日が暮れて一人で部屋にいると途端に不安に押しつぶされそうに。それを紛らわすために帰宅後はひたすらネットを見ていました。

 

藁をも掴む思いで普段は興味がない「占い」を利用し、占い師に言われた通り神社もうでをしました。

 

そこで少し気持ちに余裕ができ、夫がどんな気持ちなのかを考えるように。もしかしたら夫にとって、家庭は居心地が良い場所ではなかったのかもしれない。失踪した原因は自分以外にあると思っていたが本当にそうだろうか……

 

夫を責めてばかりいた自分が恥ずかしくなりました。そして神社で「死ぬまでにもう一度夫に会わせてほしい。会って謝りたい」と願っていました。

夫が帰ってきて

夫から「迎えに来てほしい」とメールがあったのは、いなくなってからぴったり2週間後。再会の瞬間、涙ながらに発した言葉は「ごめんね、気付いてあげられなくて。つらい思いしてたんだね」。夫は今でもその一声を忘れないと言います。

 

夫は人生を終わらせようとして失踪しました。「大きな原因は職場」と言っていましたが、もしかしたら家庭にもあったのかもしれない、と思っています。

 

それでも夫を救ったのは家族からのメッセージ。私や夫の親から毎日送り続けていたメールを、夫はちゃんと読んでいました。結婚して初めて旅行した温泉地で、自分を思って心配してくれる家族のメッセージを見て「帰ろう」と決意したそうです。

 

あれから3年。夫は会社を解雇され、私はパートを辞めて夫と共に就職活動をし、正社員で働くことに。その後も色々ありましたが、二人で力を合わせて乗り越えてきました。

 

いま振り返ってもこう思います。

「今後の人生で、あれ以上の恐怖と困難を経験することはないだろう。これからは、どんなこともできる気がする」

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