LGBT家族の絆〜カミングアウトデー フォトセッション
「夫婦」もいれば「夫夫」もある、新しい夫婦のありかた
夫婦のお悩み解決コラム自分の家族や子ども、身近な友達がLGBTかもしれないって考えたことはありますか?
LGBTというのは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字で、セクシャルマイノリティの総称。そんなLGBT当事者とその家族・パートナーを対象にした「カミングアウトデー フォトセッション」が開催されました。
このフォトセッションを企画したのは、さまざまな家族写真を出張撮影というスタイルで提供してきた「fotowa(フォトワ)」と、LGBT関連サービスを手がける「レティビー」。
LGBTという存在が当たり前に受け入れられる社会を実現したいという両社の想いが合致してこのイベントが実現しました。当日のフォトセッションの様子を、企画側や参加者のインタビューを交えてお伝えします。

撮影:中村レオさん
この記事でご紹介すること
LGBTって何?
ゲイやレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー…みなさんも聞いたことがあるこの言葉。具体的にどういうものかご存じですか?
・ゲイ:男性同性愛者、男性に恋愛感情を抱く男性
・レズビアン:女性同性愛者、女性に恋愛感情を抱く女性
・バイセクシャル:両性愛者、男性、女性どちらにも恋愛感情を抱く人(本人の性自認は関係ない)
・トランスジェンダー:生まれたときの性別に自分の中で違和感を覚えている人
・シスジェンダー:生まれたときの性別に自分の性自認が一致している人
男性が女性に恋愛感情を抱く、あるいは女性が男性に恋愛感情を抱くといった異性愛者は「ヘテロ」と呼ばれます。例えば、男性として生まれてきて「自分は男性である」と考え、女性に恋愛感情を抱く人はシスジェンダーのヘテロとなります。
参加者の感想
一緒にいて違和感がない、一番ラクな相手

浜松幸さん(右・31歳・トランスジェンダー/ヘテロ)&小暮美樹さん(左・25歳)撮影:中村レオさん
浜松さんは戸籍上は女性ですが、男性として暮らしているトランスジェンダー。恋愛対象は女性です。
浜松さんと一緒に写っているのがパートナーの小暮さん。イベントの間、まるで子どものようにはしゃぐ浜松さんを笑顔でみつめる小暮さんからは、付き合って1年のカップルとは思えないぐらいの仲の良さが伝わってきました。
「仲が良いってよく言われます。自分たちでも仲いいよ〜って言いますし(笑)」
ーフォトセッションはどうでしたか?
浜松さん:楽しかった〜!
小暮さん:写真を撮られるのがあまり得意じゃないから恥ずかしかったんですけど、2人で写真を撮ることってほとんどないから楽しかったです。
ー浜松さんは普段の生活で困ったことはありましたか?
浜松さん:
自分たちは同性愛者ではないので、日常生活でそれほど困ることはありません。自分は高校生の頃からカミングアウトしていますが、理解できない人とは無理に関わらなくて良いというスタンスです。
小暮さん:
私も元々偏見はありませんでした。彼と付き合うようになって当事者になりましたが、周りが普通に受け入れてくれるから周りに理解を求めることがないんです。そういった意味ではとても恵まれていますね。でも、例えば今後2人で部屋を借りようということになったら、戸籍上は女同士なので困ることがあるかも、という心配はあります。
浜松さん:
今はLGBTっていう言葉もできたし、昔にくらべると知識のある人も増えて、セクシャルマイノリティの状況はよくなってきてると感じます。
自分のアイデンティティを認めることが幸せへの第一歩

渡辺勇人さん(右・36歳・シスジェンダー/ゲイ)&ゴードン・ヘイワードさん(左・36歳・シスジェンダー/ゲイ)
結婚して約3年という渡辺さんとヘイワードさんカップル。今回のフォトセッションにはどんな想いを持って参加したのかお話しを聞きました。
ー今回のようなLGBTの方々向けのフォトセッションというサービスについてどう思われますか?
渡辺さん:
二人の思い出の写真を撮りたいって思いますけど、一般的な家族写真の撮影会だと周りに気を遣ってしまうんです。でも、私たちのようなLGBTの人たちが使っているってわかれば、みんなも思い出の写真を撮りやすくなるって思います。

こんなポーズで撮影することも。
ーカミングアウトすることには抵抗はなかったですか?
渡辺さん:
もちろん、100%支持しますという人ばかりじゃありません。それでも、自分たちはカミングアウトしたほうがいいと思っています。自分のセクシャリティは持って生まれたものだから、他の人に批判されてもどうすることもできませんから。相手に支持してもらうことを期待するのではなく、「自分はこういう風に生きていいく」と決めることが大切なんです。
たとえ家族だとしても最初から理解を求めなくてもいいと思うんです。時間がかかるかもしれないし、もしかしたら永遠に理解されないかもしれないけれど、自分の本当の姿を伝えることに意味があると思います。LGBTじゃなくても、自分は人と違うって思っている人には、「自分のアイデンティティが分からないと幸せの第一歩を踏み出せない」ってことを伝えたいです。
企画側の想い
LGBTフレンドリーが当たり前の世の中に
2016年2月に始まった出張撮影マッチングサービス「fotowa」の事業責任者・李さん。自身も当事者という立場から、fotowaをLGBTであってもマジョリティであっても、すべての人が使いたいと思えるサービスにしたいという想いがこのフォトセッションのきっかけになったそうです。

ピクスタ株式会社 fotowa運営チーム事業責任者・李婧さん
李さん:
LGBTという切り口での撮影会は初の試みでしたが、参加者がみんな口をそろえて「楽しかった」と言ってくださったのが嬉しかったです。今回だけでなく、今後もLGBTの人たちにかかわらず、マイノリティもマジョリティの全ての人たちが気兼ねなく使えるサービスにしていきたいですね。こういったサービスが当たり前の世の中になるようなきっかけになればという期待もあります。
fotowaのフォトグラファーにも、今後はLGBTに対する理解度を深める研修をおこなっていく予定。「LGBTフレンドリーのフォトグラファー」という肩書きがあることで、LGBTの方々が周りに気を遣わず気軽に撮影依頼できるようなサービスにしていきたいです。
マイノリティが生きやすい社会に変えていく力になりたい
今回fotowaとタッグを組んだのが、LGBT向けのWebサイト「Letobee Life」を運営している株式会社レティビー。LGBTという存在が社会に受け入れられるために必要な情報を発信するなど、彼らの社会的認知度を上げるためのさまざまなサービスを展開しています。

株式会社レティビー 代表取締役・榎本悠里香さん
榎本さん:
写真館にゲイカップルの家族写真が飾ってある。普段目にするサービスにLGBTの人々が普通に存在しているような環境で生活していれば、自然と考えかたが変わっていくんじゃないかと思うんです。社会が歩み寄れば、LGBTの人たちも自分を認めやすくなる、そんな環境をつくっていきたいという私たちの想いとfotowaさんの考えかたが合致して、今回のフォトセッションが実現しました。
家族写真や記念日の写真って、LGBT当事者から一番遠いところにあるサービスなんです。なぜなら、他に利用しているLGBTカップルがいないから。でも、そこに普通にLGBTカップルがいたら面白いんじゃないかなと思いました。
今後は、LGBTカップルをフィーチャーした広告をつくったり、LGBTの人たちが自分たちが使いたいサービスを自由に選べるような社会の仕組みをつくっていきたいですね。
愛情表現が豊かだから撮影していて楽しい
参加者と一緒になって楽しんで撮影している様子が印象的なフォトグラファーの中村さん。今回、LGBTの家族・カップルを撮影してみて、普段の撮影との違いや感想をお聞きしました。

フォトグラファー/中村レオさん
中村さん:
撮影する前も撮影中も、LGBTだから気を遣うということはありませんでした。身近にゲイカップルの知人もいますが「お互い好きならいいじゃん」って思っていますし。
元々は愛用品などモノの撮影を専門としているんですが、愛情表現が豊かなLGBTカップルの撮影はとても楽しかったです。普段は恥ずかしがってポーズをとってくれない人も多いんですけど、LGBTカップルはノリがよくて、撮影を一緒に楽しもうとしてくれるので撮る側としては非常に助かりました。
ライター所感
どの参加者も自然体で、とても幸せそうな様子が印象的でした。私自身にとっても未知の領域だったLGBTの家族やカップルの姿を間近で見て、先入観を取り払う一番の近道は「知ること」だと実感。マイノリティの存在を「普通に」受け入れられる社会になれば、もっと自由にいろいろな価値観を認め合える、誰もが生きやすい世の中になる気がしました。
カミングアウトデー(10月11日):
自身の性的嗜好や性自認をカミングアウトした人々をお祝いしたり、LGBTに対する認識向上を目的とした記念日。