地方で過ごす夫婦暮らし

京都移住計画に学ぶ、生きたい場所に出会うためのヒントとは? 田村ご夫婦インタビュー

「地方で暮らしたい」と思ったとき、あなたはどうやって住みたいまちを見つけますか? 住む場所の選択肢はたくさんあるので、探すのが大変。「自分にあったまちを見つけるにはどうしたらいいのだろう」と途方に暮れることもありますよね。

今回お話をうかがったのは、夫婦2人の地元京都で暮らす田村ご夫婦です。2人のお話から、住みたいまちとの出会いかたや移住後の暮らしかたなど、いくつものヒントが見えてきました。

 

東京を経て故郷、京都へUターン

2人が出会ったのは大学生のとき。別々の大学に所属していた篤史さんとまりさんは、フットボールイベントで共通の友人を介して知り合いました。それがご縁でまりさんが、篤史さんの所属するフットボールサークルにマネージャーとして加入。22歳のときにお付き合いが始まったそうです。

卒業後、篤史さんは就職で東京へ。遠距離恋愛を経て2012年に結婚し、2016年には長女が誕生しました。2人とも一度京都を離れた経験を持っているのですが、故郷が恋しい気持ちが強かったようです。

(キャプション)宮津市上世屋京都移住計画に学ぶ、生きたい場所に出会うためのヒントとは? 田村ご夫婦インタビュー

「京都は生まれ育った故郷。そこに家族がいることを考えると、一生住む場所は京都だなと思っていました。だから、東京にいるのは最大5年と決めていましたね。結果4年働いて、震災というきっかけや、自分の仕事をつくることをしてみたいと思い、京都に帰ったんです」(篤史さん)

「結婚前、東京で一緒に住んでいた時期があるんです。その頃からお互い京都に戻りたいという気持ちは持っていたのですが、いつ京都に戻るか話し合ったことはなくて。私は川と山が恋しくなって、6ヶ月で京都に戻りました」(まりさん)

それぞれのタイミングでUターンをして、結ばれた2人。それから5年が経つ今、暮らしの変化を聞くとこんな答えが返ってきました。

「東京に居た頃は盆と正月しか家族とも会えなかったので、祖父母が老いてゆくスピードにショックを受けたこともありました。京都に戻ってからは、家族に育ててもらった恩を返しやすくなりましたね」(篤史さん)

山や川が身近にある風景、直売所があちこちにあり新鮮な野菜が手に入る豊かさ、地域の人に見守られながら子育てをできる幸せ。2人は、手触り感のある日々を大切に過ごしていました。

 

住みたい街で暮らしをつくる

東京に住んでいた頃から、「暮らしと仕事がミックスした状態をつくりたい」と考えていた篤史さん。京都に戻って4ヶ月後には会社を辞め、自らの手で仕事をつくりはじめました。

そのひとつが“京都移住計画”。居場所づくり、仕事紹介、住まい紹介の3つを軸に事業展開し、生きたい場所で生きる人が増えるお手伝いをしています。

京都移住計画に学ぶ、生きたい場所に出会うためのヒントとは? 田村ご夫婦インタビュー

京都移住計画のメンバー

「将来、京都に戻りたいという友人はいましたが、『いつ移住するの?』と聞いたら『いつか』って。その“いつか”を実現するために始めたのが、京都移住計画です」(篤史さん)

一方まりさんは、伝統工芸に用いられる装飾技法のひとつである螺鈿の職人。100年を超える家業の“嵯峩螺鈿・野村”にて職人として働いています。また、のむらまり個人としてもジュエリーブランド“confianc”を立ち上げ、螺鈿の魅力を伝えています。

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まりさんの作品

「結婚式で父が作ったかんざしを身につけたのですが、友人から「キレイ!」と言ってもらえて。ジュエリーなら若い人が興味をもつきっかけになりやすいと考え、職人としてスキルを磨きながら“CONFIANCE(現=MARI NOMURA)”を立ち上げました」(まりさん)

自分たちの暮らしにフィットした仕事、京都に住んでいるからこそできる仕事を自らの手でつくり出してきた2人からは、京都の街にどっしり根ざした安定感と自信がうかがえました。

 

住みたいまちに出会い、馴染むためのヒント

東京と地方で暮らしかたは異なるもの。京都で暮らす上で、大切にしていることが2人にはあるといいます。

「フレンドシップエコノミーという言葉も出始めましたが、できるだけ顔の見える人同士の関係性のなかで生産と消費を行なうことを心掛けています。お金の使いかた=暮らしかた。たとえばコーヒーチェーン店よりも個人経営の喫茶店に入るようにして、そこでマスターに声をかけたら、まちに顔見知りが増えていきますよね。そうやってコミュニティの濃度を高めています」(篤史さん)

お金の使いかたは、毎日の食事や買い物からたった一人でも始められること。今住んでいるまちでもすぐに始めることができそうです。

また、田村さんご夫婦の休日の過ごしかたを聞くと、そこにもまちとつながるヒントが隠されていました。

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宮津市上世屋

「今住んでいる嵐山は暮らしやすいのですが、もう少し田舎の暮らしはどんなものかなと思っています。そこでまずは情報を得ようと、休日を使って田舎の方に出かけています」(篤史さん)

「夫が『京丹波町に移住したギター職人がいるらしい』というので名前を見ると、学生時代の同級生だったんです。何年も会っていない関係でしたが、Facebookで連絡をすると『ぜひ来て!』と歓迎してくれました」(まりさん)

実際に京丹波町へ行くと、ギター職人から近所のお店や住んでいる人を紹介してもらったそう。数珠つなぎに出会いがあり、京丹波町に顔見知りが増えていきました。

「現地に行くと、『食べるもの、住む場所や、関わる人などのその土地らしさ』を知れます。遊びが自分たちの暮らしの幅を広げることにもつながっていますね」(篤史さん)

京都移住計画に学ぶ、生きたい場所に出会うためのヒントとは? 田村ご夫婦インタビュー

京丹波町のギター職人の家にて

インターネットで世界中の人と簡単につながれる時代。移住先を検討するはじめの一歩として、「今あるつながりから、気になるまちに住んでいる人に連絡をとり、会いにいってみては」と篤史さんはいいます。

「すごく近しい関係ではなくても、連絡をとってみたらいいですよ。たいてい『何でも聞いて!』『いつでも来て』と言ってくれます。まずは自分が動いてみて、新しい土地に出会うことからはじめてみてください。思ったよりも簡単だし、良い反応が返ってきますよ!」(まりさん)

さらに篤史さんは、スムーズに移住するためのポイントを教えてくれました。

「ポイントは、知り合いを作ってから移り住むことです。『僕たちはこんな人間です』というのをそこに住む人達に知っておいてもらえると、入ってくる情報の質が違います。子どもと同じくらいの歳のご夫婦を紹介してもらうことあれば、あそこの会社が求人を出しているよと教えてもらえることもあります。住んでいるからこそわかる情報があると、心強いですよね」(篤史さん)

 

京都でこれから実現していきたいこと

一歩ずつ、自分たちに合う仕事と暮らしをつくってきた2人。今後はどんなことに取り組みたいとと考えているのでしょうか。

「京都移住計画では居場所づくり、仕事紹介、住まい紹介の3つをサポートしていますが、その中の“居場所”は独身者とファミリーでは必要な情報が異なります。今後はファミリー向けに、行政が発信している情報に加えてまちに住む人が主体で活動しているNPOやサークル活動の情報を発信していけたらいいですね」(篤史さん)

実はまりさんも、京都移住計画のメンバーの一人。まりさんがお母さんとしてあちこちに足を運んで得た情報があれば、これから京都で暮らそうとするファミリーにとっても大きな安心につながりそうです。

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京都移住計画で小商いをする移住者のマルシェを開催したこともある。

あなたが地方で暮らすのもいいなとお考えなら、まずは気になるまちに顔見知りをつくるところから始めてみてはいかがでしょうか。

実際に足を運んで現地の人に話を聞けば、「このまちに自分が住むとしたら?」とイメージを持ちやすくなります。自分なりのまちを選ぶ基準も見えてきそうですね。

 

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