夫婦別姓のメリット・デメリットとは? 様々な角度から徹底分析!
夫婦のお悩み解決コラム現在結婚されているかたは、自分の姓についてどうお考えでしょうか。
あなたの姓はもとの姓ですか? それとも相手の姓に変更しましたか?
変更したかたは、さまざまな手続きが大変だったことと思います。新婚だと、新しい姓にまだなじめていないかもしれません。また逆に、同じ姓になったことで夫婦感が高まり、喜んでいるかたもいらっしゃるでしょう。
そこでもし、夫婦別姓が選択できるような社会になったら、どうしますか?
今回は夫婦別姓について、そのメリットとデメリットを紹介します。起こり得るかもしれない未来のことを、一緒に考えてみましょう。
この記事でご紹介すること
夫婦別姓の現状
一般的には「夫婦別姓」と言われるこの制度ですが、法的には「姓」や「名字」のことを「氏」といいますので、正確には“夫婦別氏”、更に夫婦別姓が可能な制度のことを「選択的夫婦別氏制度」といいます。
今の法律では夫婦別姓は認めておらず、結婚したら妻か旦那、どちらか一方の姓を使わなければいけません。女性が姓を改める割合が多数だと思われますが、現在の女性の社会進出により、改姓による不便・不利益などで、夫婦別姓を求める声が高まりつつあります。
法務省も夫婦別姓の需要について認識していますが、今はまだ国民の意見が煮詰まってないため、国会で検討していないようです。夫婦や家族の在りかたの多様化のため、夫婦別姓については引き続き検討を進めるのだとか。
また、平成24年に国民全体にアンケートした所、夫婦別姓の賛成派と反対派は、両方とも約35%となりました。若い人では約半分が賛成派、反対派は約2割。年配では賛成派が約3割、反対派が約4割となりました。世代間でも考えかたにギャップがあるようです。そういったことも踏まえ、国民の理解のもとに進めるべきものとしているそうです。
夫婦別姓のメリット
現法ではまだ夫婦別姓は認められていませんが、もし認められたとしたときに考えられるメリットをご紹介します。
仕事に影響を与えない
やはり、「自分の名前で築き上げたキャリアを保てる」ことがメリットなのではないでしょうか。
姓が変わると、名刺の刷り直しや取引先への説明、書いたマニュアルや論文の著者名が一致しないなどが発生します。姓が変わらないままだと、何の不利益を受けることなく今まで通りキャリアを積んでいくことが可能です。
個の尊重・自己喪失感を感じなくて良い
姓が変わらないので、個人情報やプライベートが保護されます。名前だけでは結婚したか分からないので、煩わしいこともありません。
また、数十年自分の名前で生きてきたこそある「個人」を尊重でき、名前が変わったことに対する自己喪失感もないでしょう。
女性の社会進出
女性の社会進出により、浮き彫りになっていく「男女格差」や「男女不平等感」。
女性が結婚後も自分の名前を堂々と名乗れることで、現代の男性中心の社会が少しずつ変わっていき、いずれ平等な社会が実現できるかもしれません。
両家の家名に囚われない
どちらかの名字になると、「うちの嫁」「うちの婿」など、その家の人間というふうになってしまいますが、別姓だと両方が自分の家の名を背負うことになります。
また、現在は少子化により一人っ子も少なくありません。自分が相手の名字にすることで、実家の名字が途絶えてしまう……といった心配もなくなりそうです。
公的手続きが不要になる
姓が変わって面倒なのが、名前変更によるさまざまな手続き。旧姓が使われているものはすべて変更の手続きをしなければいけないため、非常に手間と時間とお金がかかります。
夫婦別姓になれば、戸籍・免許証・パスポートなどの公的なものから、ハンコ・クレジットカード・銀行口座など私的なものなど、その他多々ある各種手続きが不要になります。
結婚の報告が不要
氏名変更する必要がないので、会社などへ結婚の報告をする必要がありません。変に勘繰られないのもうれしいポイントですね。
夫婦別姓のデメリット
現法ではまだ夫婦別姓は認められていませんが、もし認められたとしたときに考えられるデメリットをご紹介します。
日本的な家族観がなくなる?
家族全員同じ姓という、夫婦や家族の「絆」や「一体感」が希薄になる可能性があります。
日本ではこれまで同姓にしていたという歴史があり、その流れが途絶えるのはさみしいものなのかもしれません。
離婚が増える可能性がある
同姓の場合、離婚により旧姓へ戻す手続きなどが必要になりますが、別姓だとそういった手続きや周囲への影響が少なくなるため、離婚へのハードルが下がるのではないでしょうか。
上でご紹介した「絆」や「一体感」も薄れているので、離婚に踏み切りやすくなる可能性も。
導入初期は珍しがられる
「選択的夫婦別氏制度」が始まってすぐに別姓にすると、周囲から珍しがられるかもしれません。その子どもたちも関心の矛先になることも。
同姓が圧倒的に多い中でのスタートとなるので、はじめは大変かもしれません。
子どもがどちらかの姓を選択する
デメリットというよりは、夫婦別姓を実現させようと考えたときに浮かぶ問題です。夫婦別姓にすると決めたら、子どもの姓をどちらの姓にすべきか話し合わなければいけません。子どもがすでにいる場合、選ぶ際の苦悩や、選ばれなかったときの苦悩どちらも考えられます。
また大きくなったとき、「なぜママ(パパ)と苗字が違うんだろう」という疑問や混乱が生まれたり、万が一離婚することになり子どもと姓が違う場合、子どもの姓だけを変更することに。子どもの健全な育成に影響が出る可能性が考えられます。
現法で夫婦別姓を選択する際のデメリット
夫婦別姓は法律上まだ認められていません。そのため、法的には婚姻関係ではない状態である「事実婚」を選択するかたもいます。そうした場合のデメリットについてご紹介します。
公的サービスが受けられない
相続税の控除・所得税の配偶者控除・医療費控除の合算などができないなど、事実婚には税金関係の権利がありません。
また、どちらかが救急車で運ばれたときに夫婦の証明が大変といった、各種サービスを受けることができない、できたとしても説明が面倒だというデメリットがあります。
戸籍上は独身になる
戸籍上には婚姻の履歴が残らないので、お互いを夫婦だと証明することが難しくなります。
子どもが生まれた場合、父親の欄は空欄になる
子どもが生まれ出生届を出すと、非嫡出子ということで母親の戸籍に子どもが入ることとなり、未婚の母と同じ扱いになってしまいます。
父親と子どもの親子関係を証明するためには、認知の手続きをする必要があります。
相続が発生した場合子どもが優先
事実婚で夫もしくは妻が亡くなった場合、法定相続人になることができません。父親が認知した子どもがいれば、子どもが優先的に法定相続人となります。しかし、子どもがいない場合は、亡くなった夫もしくは妻の親や兄弟姉妹が法定相続人となります。
夫もしくは妻に遺産を相続させたい場合は、公的な遺言書を準備する必要があります。不慮の事故等も考えられるので、早めに用意しておくと安心ですね。
しかし、遺言書に「妻(夫)にすべての財産を相続する」と書いてあっても、被相続人の法定相続人(子どもや父母)から、最低限の財産である遺留分を請求される可能性があります。
通称として旧姓を使用する際のデメリット
戸籍上は夫婦同名で、通称として旧姓を名乗るパターンでのデメリットは以下のとおりです。
公的サービスでは旧姓は使用できない
戸籍上は夫婦同姓なので、変更後の名字で登録することになります。旧姓は通称でしかないので、公的な証明にはなりません。
国際結婚で在日になったらどうなる?
国際結婚で在日になったときのメリット・デメリットをご紹介します。
メリット
- 現在(日本人)の氏か外国人の氏か選べる
- 法律婚なのに夫婦別姓になれる
デメリット
- 外国人は日本人側の姓にできない
- 子どもの姓は日本人側の姓となる(日本人が日本人の姓を名乗っている場合は日本人の姓、日本人が外国人の姓を名乗っている場合は、外国人の姓)
最後に
現在の「夫婦同姓でなければいけない」というのは、氏を変えたくない人にとっては、結婚のハードルが高くなってしまいますよね。晩婚化、少子化ということもあるので、「選択的夫婦別氏制度」ができるともっと自由に生きられるのかもしれません。
しかし、デメリットや課題も多々あります。
ただ、こうやってメリット・デメリットを挙げて、どうすればよいのか考え議論することで、よりよい制度へと作り替えられていくのではないでしょうか。
まだ認められていない制度ですが、賛成者も反対者も議論を重ねて練って発言していけば、より良い形に収まるのではないかと思います。