夫婦別姓はいつから始まるどういう制度なのか? 別姓のメリットとは?
夫婦のお悩み解決コラム結婚後は夫婦同姓が当たり前の日本ですが、最近よく「夫婦別姓」という言葉を耳にします。読んで字のごとく、夫婦が違う姓を名乗るということなのですが、「事実婚や内縁状態とどう違うの?」「いつから始まるの?」など、よくわからない点も多いですよね。
今回はそんな夫婦別姓について、どのようなものなのか、いつ始まるのか、メリットやデメリットにはどんなことがあるのかをご紹介します。
この記事でご紹介すること
夫婦別姓とは?
夫婦別姓とはその名のとおり、結婚後の夫婦が本来の姓をそれぞれ名乗ることです。
夫婦別姓に賛成する人が増えている?
「選択的夫婦別氏制度に関する世論調査」によると、「選択的夫婦別氏制度」に賛成する割合が昭和51年では20.3%だったことに対して、平成24年では35.5%と増加しています。反対する割合は、昭和51年では62.1%と半数以上を占めていたのに、平成24年では36.4%とかなり減少しています。
時代の流れとともに、夫婦別姓を賛成する人や、今の夫婦同氏制度を変えたほうがよいと考えている人が増えているようです。
夫婦同名の歴史
法務省によると、明治9年は夫婦別氏制で、妻は実家の氏を名乗ることとされていました。
明治31年の民法によって夫婦同氏制となり、夫婦は同じ家になると同じ氏を名乗るように。そして昭和22年の民法改正により、夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を名乗ることが決まり、現代に至るということです。
はじめは日本も夫婦別氏制だったんです。しかし、当時は別氏制度にもかかわらず、妻は夫の氏を名乗っていたそう。やはり時代によって世論は異なるのですね。
夫婦同名は法律で決められた制度?
夫婦同名は民法で定めされたものです。なので現在は夫婦別姓で婚姻届を提出することはできず、夫婦別姓を選択したい場合は通称として使い続ける(公的な書面では同名)か事実婚を選択する他ありません。
夫婦別姓はいつから導入される?
日本では、具体的に夫婦別姓をいつから認めるか等は決まっていません。しかし昨今の議論を鑑みて検討されています。法務省では「選択的夫婦別氏制度」を、婚姻制度や家族の在りかたなどに関わる非常に重要な問題だとしています。やはり国民からさまざまな意見があるので、国民の理解をもとに進めていきたいと考えているそうです。
海外では導入済み?
実はアメリカやカナダ、中国や韓国でも夫婦別姓が認められています。カナダでは夫婦別姓が法律で決まっている州もあったり、中国では夫婦別姓であることが一般的であったり、国によってかなり認識が違うようです。夫婦別姓があるべきかの議論はここではしませんが、先進国の一部ではすでに夫婦別姓の動きがあるようです。
夫婦別氏制度の種類
①選択的夫婦別氏制度(夫婦別姓制度)
男女が結婚する場合は、同じ氏(姓・名字)を名乗らなければいけません。しかし、夫婦が結婚後もそれぞれ結婚前の氏でいることを望んだ場合、別姓を認めることができる制度を「選択的夫婦別氏制度」といいます。同じ姓を名乗ってもいいし、元の姓を名乗ってもいいといった、選べる制度だということです。
「選択的夫婦別氏制度」というのは法務省での呼び名で、一般的には「夫婦別姓」「選択的夫婦別姓制度」などといわれています。
②例外的夫婦別氏制度
現代の制度である「夫婦は同じ氏を名乗る」ことを原則として、夫婦が結婚後に結婚前の氏をそれぞれ名乗ることを「例外的に認める」という考えかたの制度です。
選択的夫婦別氏制度と例外的夫婦別氏制度の違い
「選択的夫婦別氏制度」は、同氏夫婦と別氏夫婦についてどちらが原則であるということは決めておらず、どちらも対等なものと位置付けています。
「例外的夫婦別氏制度」は、夫婦は同氏が原則であることを前提として、夫婦の氏が別氏となるのは例外であるという考えかたです。夫婦別姓を選ぶ夫婦が少数だということを踏まえての制度ということですね。
「対等」か「例外」か、といった違いとなっています。
事実婚と別姓夫婦の違い
夫婦別姓と聞くと、「事実婚を選べばよいのではないか」と思いませんか? ただ、事実婚の場合は、婚姻届を出さないため法律上では夫婦となりません。税金や公的サービスなどさまざまなことで不利になります。
もしも選択的夫婦別氏制度が導入され、別姓夫婦となった場合には、法律上で別姓が認められているので、婚姻届を提出して法律上の夫婦となることができます。
今の日本で夫婦別姓を行う選択肢
今の日本で夫婦別姓をするには、以下のような選択肢があります。
通称
職場では旧姓を使うという、一番一般的なパターン。最近では働く上での旧姓の使用を認めている企業も増えているので、これからもっと通称を使うかたが増加するかもしれません。
事実婚
夫婦が婚姻届を出さず、事実上の夫婦生活を営んでいる状態のこと。姓を変える必要はありませんが、法律上の夫婦ではありません。ただ一部の法律では、法律婚の夫婦とほぼ同じ権利・義務を持つことができます。
コトの発端はサイボウズ社長の青野氏
夫婦別姓問題が国内で大きな話題になっているのは、ソフトウェア企業「サイボウズ」の社長である、青野氏の影響があるようです。
青野氏は婚姻の際に妻の氏となりました。そのため旧姓の青野を通称名として使用しているのですが、新姓と旧姓を使い分けることでタイムロス、手間やお金がかかるなど、経営者として不利益を受けているんだそうです。
また、マイナンバーカード等に旧姓を併記するシステム改修に100億円の予算が必要となったり、夫婦同姓を義務付けているのが日本だけということで、日本企業などの信頼が損なうなど、国家的損失があることを主張しました。
夫婦別姓に関する訴訟
さらに、サイボウズの青野氏以外でも別姓に関する訴訟が始まっています。
外国人との結婚では夫婦別姓が認められているのに、日本人同士は夫婦同姓しか認められないのは違憲だとして、事実婚の夫婦が国に慰謝料を求めました。またとある女性教諭が、職場で旧姓を使いたいことを裁判で求めました。
このように、夫婦別姓を求める声が増えてきているようです。
夫婦別姓に関する最高裁の判断
最高裁は、事実婚の夫婦も女性教諭も、夫婦同姓は合憲と判断しました。やはり法律上では「夫婦同氏」が決まっているためでしょう。また、国会で「選択的夫婦別氏」について話し合い、ルールを作るなどして判断されるべきだとしているそうです。
夫婦別姓を選べないのは世界で日本だけ?
夫婦別姓を選べないのは世界で日本だけだといわれています。それでは他の国ではいったいどうしているのでしょうか。
国連から勧告を受けている
日本が1985年に締結した「女子差別撤廃条約」の第16条の1として、以下のことが掲げられています。
締約国は,婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし,特に,男女の平等を基礎として次のことを確保する。
内閣府男女共同参画局「女子差別撤廃条約全文」より
その中の項目に、以下のことがあります。
(g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)
内閣府男女共同参画局「女子差別撤廃条約全文」より
日本の夫婦同氏制度は上記の規定に反しているとして勧告を受けています。しかしまだ法律案を提出するには至っていません。
他の国ではどうなっている?
10ヶ国紹介します。
- アメリカ合衆国
夫婦別姓の選択が可能。州によって法律は異なる。 - カナダ
夫婦別姓の選択が可能の州が多い。州によっては夫婦別姓が法律で決まっている。 - イギリス
夫婦別姓の選択が可能。 - フランス
夫婦別姓の選択が可能。 - ドイツ
夫婦別姓の選択が可能。 - オーストリア
原則として婚前の氏。氏を変更する場合は婚姻前に手続きをする。 - オーストラリア
夫婦別姓の選択が可能。 - 中国
夫婦別姓が一般的。 - 韓国
夫婦別姓。 - ロシア
夫婦別姓の選択が可能。
選択できる国と、別姓のみ認められている国があるようですね。
夫婦別姓のメリット・デメリット
夫婦別姓制度はまだ認められていませんが、もし認められた場合に考えられるメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
- 仕事に影響を与えない
- 個人の尊重、自己喪失感を感じなくて良い
- 女性の社会進出の手助けになるかもしれない
- 両家の家名に囚われない
- 公的手続きが不要になる
- 結婚の報告が不要になる
デメリット
- 子どもがどちらかの姓を選択する苦悩が発生する
- 日本的な家族観がなくなるかもしれない
- 離婚が増える可能性がある
- 導入初期は珍しがられ、関心の眼差しにさらされる
詳しくは「夫婦別姓のメリット・デメリットとは? 様々な角度から徹底分析!」で紹介しているので、こちらをご覧ください。
戸籍制度が利用できなくなる?
戸籍制度の利用ができなくなるのではないか……という噂もありますが、法務省によると戸籍制度が利用できなくなることはないようです(2018年6月末現在)。
Q6 選択的夫婦別氏制度が導入された場合,別氏夫婦と同氏夫婦では,どのような点が違ってくるのですか。
A。別氏夫婦と同氏夫婦とは,夫婦が同じ氏を名乗っているか,別々の氏を名乗っているかという点が違うだけで,その他の点では両方の夫婦に違いはありません。もちろん,夫婦間の権利義務や子どもに対する親の責任や義務についても,別氏夫婦と同氏夫婦とで異なるところはありません。
法務省:選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について
より
まとめ
日本ではまだ認められていない夫婦別姓。同姓か別姓かを選択できる国では、夫の姓になる女性が多いようです。
しかしここで重要なのは、「自由に選ぶことができるかどうか」なのではないでしょうか。夫婦別姓という選択肢が増えることで、今まで結婚を諦めていたかたや事実婚を選んでいたかたが、法律上の夫婦になれるということです。
それぞれメリットやデメリットはありますが、自分たちがどのような未来を歩いていきたいかを考えてみるとよいかもしれませんね。
参考:
選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について
平成24年の世論調査の結果
我が国における氏の制度の変遷
「夫婦別姓が認められないのは国家的損失」青野氏、初弁論で経営者の視点から問題提起
事実婚2人が提訴へ 戸籍法規定で
最高裁「夫婦別姓? 旧姓使えばいいじゃん」→地裁「職場で旧姓禁じていいよ」→弁護士「えっ!?」
女子差別撤廃条約
女子差別撤廃条約全文
資料6 女子差別撤廃委員会の最終見解に対する日本政府コメントについての同委員会の見解(仮訳)
夫婦別姓各国の状況